任意後見制度について

任意後見制度とは、自分の判断能力が十分なうちに、あらかじめ後見人となってくれる人(「任意後見受任者」といいます。) と任意後見契約を締結し、そこで選任しておいた任意後見人に、将来、自分が認知症や精神障害等で判断能力が不十分になったときに支援を受ける制度です。

後見人となってくれるのはどんな人?

後見人になる資格制限はありません。本人が信頼できる人を選べます。家族を選んでもいいですし、仲良しのお友達を選んでもいいです。ご近所の頼りになる方を選んでもいいですし、専門家を選ぶこともできます。
ただし、次の方は後見人になることができません。

  • 未成年
  • 破産者
  • 行方不明者
  • 家庭裁判所から法定代理人などを解任されたことがある人
  • 本人に対して裁判をしたことがある人、その配偶者と直系血族
  • 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある人

また、欠格事由に該当しなくても、制度を利用する人と住所がかなり離れているケースなど、現実的に任意後見人になることが難しい人もいます。

任意後見契約の利用方法

任意後見契約では、任意後見の開始する時期、それまでの間に財産管理等の契約があるか否かによって3つの類型に分けられます。

1.将来型 : 任意後見契約だけ締結しておく
(例)「現在は元気、将来判断能力が低下したときから支援して欲しい。身寄りがないので「死後の事務処理」もお願いしたい。」

2.移行型 : 財産管理や特定の事務に関する通常の委任契約を締結し、将来、判断能力が低下した際は、任意後見に移行する
(例)「判断能力は低下していないが、心配だから契約したときから支援して欲しい。「死後の事務処理」もお願いしたい。」

3.即効型 : 任意後見契約締結後、速やかに任意後見監督人を選任する
(例)「すでに判断能力が低下している。身寄りがないので「死後の事務処理」もお願いしたい。」

任意後見契約の契約内容

契約内容は法律の範囲内で自由に決めらますが、特に具体的に定めておく事項は次の通りです。

  1. 管理の対象となる財産の範囲(財産目録の作成)
  2. 財産に関する委任事務、特に法律行為の代理権の範囲
  3. 身上配慮事務の具体的内容
  4. 任意後見受任者の委任者に対する報告義務の具体的な履行方法、報告・通知の受理代行者
  5. 任意後見契約終了時における証書類等の返還の方法
  6. 本人死亡時の諸措置       など

法定後見にあるような本人の行為に対する同意権・取消権はありません。

任意後見契約の契約方法

任意後見契約を締結するには、任意後見契約に関する法律により、公正証書でしなければならないことになっています。
その理由は、委任者本人の意思と判断能力をしっかりと確認し、また、契約の内容が法律に従ったきちんとしたものになるように、長年、法律の仕事に従事し、法的知識と経験を有する公証人が作成する公正証書によらなければならないと定められているのです。公証人は、任意後見契約の内容等について適切なアドバイスをしてくれます。

まとめ

任意後見制度は、契約後に判断能力が低下したときに医師の診断書をもらい、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任申立てを行い、審理・審判の後に登記され任意後見が開始します。
判断能力が低下したかは、日常を知っている人でないと判断ができません。
任意後見契約と同時に、見守り契約を締結するなど、申立てがスムーズにできるようにしておく必要があります。
制度そのものや契約の種類など、内容を正しく把握し、将来に備えた準備をすることで、財産や権利を守りましょう。

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